修也の部屋はベッドと勉強机、収納棚など今時の高校生の部屋といった感じだ。
龍臣は適当な場所に座りながら周りを見渡す。この部屋に来るのも久しぶりだった。修也がもう少し小さい頃は時々ここへ来て宿題を見てあげたものだ。
「俺が記憶堂行かなくて寂しくなっちゃったのー?」
修也はニヤニヤしながらこちらを見てくるため、龍臣はため息をついた。
「そんなわけないだろう。そうじゃなくて、お前に余計なことを言ったかなと思って。悪かったよ」
そう謝ると、修也は笑いながら首を横に振った。
「全然。ただテスト期間だっただけ」
「でもお前、テスト期間でも記憶堂には来ていただろう?」
「今回からは真剣にやろうと思ったんだよ」
修也はそう言うと、教科書が積んである机を親指で指差した。
「あの日も本当はあれを言いに行ったんだ。言いそびれたけど」
「どうしたんだ、急に」
「まだ正直、大学へ行くかは迷っているんだけど、保険というか。もし急に大学進学すると決めたとしても、成績がやばかったら元も子もないでしょう? だから成績だけはキープしておこうかなって」
なるほどな。それは確かに一理ある。いざ、大学へ行きますとなったとしても成績が追いつかなかったら意味がない。
勉強だけはして、自分の選択肢だけは守っておこうということか。
「それはいい心構えだな。だから記憶堂に来なかったのか? 本当はあれが原因だったんじゃないのか?」
あれとは母親の話をしたことだ。しかし修也は「ううん」と否定した。
「あれはあれで確かに動揺はしたけど、そこまで濃い内容だったわけじゃないし。すぐにテストに切り替えられたし大丈夫だよ」
そう言うと、今度は目じりを下げた。
「もしかして俺が落ち込んでいるとか思って心配かけちゃった? だったらごめん」
「まぁ、心配はしたよ。僕も言うつもりはなかったし」
「そんな感じだったね。あずみさんがたまらず言っちゃったって感じ」
フフと笑うが、すぐに真顔になって聞いてきた。
「あずみさんの様子どう? この前早い時間に起きて来たし、なんだか最近様子が違う気がして」
やはり修也も感じていたのかと思った。その問いには龍臣も小さく頷いた。
「本人も戸惑っていたよ。どうしたらいいかわからない、コントロール出来ない時があるって」
「それってどういうことなんだろう?」
龍臣は先日あずみが起こしたポルターガイストのような現象を話した。
すると修也は目を丸くして驚く。
「それやばくない!? あずみさんが悪霊みたいなことしたってことでしょう?」
「悪霊ではない。でも、本人も泣いていた」
龍臣は抱きしめた両手を見つめる。