「…、」

ガサガサと鞄の中を漁って、取り出した筆箱を机の上に置く。

極力、隣なんて見たくないのに、どうしても視界に入ってしまう王子様。

髪がボブなせいで、隣を髪の毛のカーテンで隠す事も出来ないし。

王子様は素知らぬ顔で小説に視線を走らせていた。

「‥。」

私の頭の中は疑問だらけ。

どうして彼は、
私をそんな目で見たんだろう。

何て、そんな疑問が脳内をぐるぐるしている。

あ、もしかして、
今日の朝ご飯のカスが顔に付いてた、とか。

そう思ったから、私は咄嗟にペタペタと自分の顔を触る。

でも触ってる限りでは何もない。

歯に海苔とかが付いてる事はない、だって見せてないから。

じゃあ何で…?

私、嫌われる様な事した?

さっきの彼の行動が意味不明過ぎて悶々としていたら、

「おい、額にシワ出来てんぞ。ババァみてぇ。」
「っ、て、‥!」

突然ビシッと額にデコピンされて、その痛さに少し涙眼になる。

顔を上げれば可笑しそうに玲が笑っていた。

「…っ、玲!」
「ふは、何お前顔真っ赤だけど。タコかよ。」
「っ、うるさい!」

そう言ってふんっ、と顔を背けたら、“ごめんごめん”と頬を摘ままれた。

「‥言葉と行動が合ってないんですけど。」
「え、そう?」
「っ、離せこのやろう!」

ぐいっ、と玲の手を顔から退かせて、睨みつければ玲は益々可笑しそうに笑った。

玲はいつもこんな感じ。
物心付いた時からいつも私をからかってばかり。

「アンタ達ほんと仲良いね。」
「っ、藍ちゃっ、…、」

そう感心した様に言いながら、藍ちゃんがこっちに歩いて来た。

「だろ?、俺らほんと腐れ縁の仲良しだからさ。」
「っ、仲良くないし!」

「…あのね鈴ちゃん。そういうのが仲良しなのよ、知ってた?」

そう言って呆れた顔の藍ちゃん。

気が付けば私は、隣の王子の存在何て完璧に忘れていた。