────ドサッ、
少し派手な音が響いて、重たい鞄を自分の席へと置いた。
「…あ、‥。」
その音に反応して、王子様はゆっくりと顔をあげる。
そのまま視線が絡み合って。
私は思わず息を呑んだ。
なんて綺麗な顔なの。
童話の絵なんか叶わない位、彼はとても綺麗な顔立ちだった。
瞳の色は濃い緑色。
蜂蜜色の髪は緩くウェーブが掛かっていて、触ったら柔らかそう。
すると彼はその綺麗な顔に一瞬だけ眉を寄せて、すぐに私から顔を逸らした。
その行為に私の行動が固まる。
「…、」
‥…は?
なんだ今の顔は。
確実に今、一瞬だけど、何か汚い物を見る様な顔してたぞこの王子。
ていうか、
思いっきり今日が初対面で、ただ目が合っただけなのにその態度はなんだ。
目が合ったら“おはよう”とか“君が隣の席の人?”とか何かしら話すのが普通でしょ?
「‥っ、」
何だか無性に苛ついて、頬が赤くなるのが分かった。
私は照れて顔が赤くなるよりも、苛ついて顔が赤くなるタイプ。
私は自分の席に座って、なるべく隣を見ないように下を向いた。