────ガラっ、



「こら。もうHR始まるから、今立ってる奴は席に着けよー?」

そんな声が入り口から聞こえて、出席簿を持って入ってくる数学担当の及川先生。

この人は私の高1の時の担任だった。

「えーっと、今日からここB組の担任になった及川勝(オイカワマサル)だ。去年D組だった奴は俺のこと知ってると思うけど、これから一年間よろしくな。」

何て言って笑う先生は密かに女子に人気がある。
年はまだ29歳位だし、短く切り込んだ髪型で、顔も童顔っぽいから、制服なんて着たら高校生に間違えられるぐらい。

そんな先生に一人の女子が手を挙げた。

「先生っ、あの、間宮くんは学校来ないんですか‥?」
「…?」

マミヤ‥?
ってもしかして隣の王子の事?

「ああ、間宮は今週一週間は留学でまだ学校には来ない。」

そんな先生の返事に、女子皆があからさまに落胆しているのが見えた。
一体どれだけ人気なんだこの王子様は。

女子皆の注目の的で、
見た目は童話から出てきた王子様。

そんな隣の席の彼は、
一体どんな人なんだろう。

机に頬杖を付いて、ぼんやりとそんな事を考えていた。