「ったく、お前らもハーフ王子の話してんのかよ。」
「え、あ、‥玲。」
「おはよ鈴。近藤も。」

そう呟きながら、ヒョコ、と藍ちゃんの横から顔を覗かせるのは幼なじみの来栖玲(クルスレイ)。

コイツとは家も隣同士で、幼稚園からの腐れ縁ってやつ。

玲の髪はダークブラウンで、襟足だけを刈り上げている。
何だか今時の男子って感じ。

そんな玲に藍ちゃんが声を掛けた。

「そんなに皆王子のこと話してる訳?」
「してるしてる。この教室入った瞬間から、王子って言葉をもう何十回も聞いたしさ。もう耳にタコが出来そうだわ。」

何て悪態を付きながら小さく溜め息を零す玲。

「全く、王子なんてただハーフで物珍しいだけじゃねえか。」
「ああ、そういえば栗栖、アンタ去年王子と同じクラスだったもんね?」
「え、そうなのっ?」

そう聞き返せば呆れた顔をする2人。

「ったく、お前俺の教室に来てた癖に気づかなかったのかよ。」
「‥だって、廊下までしか行かないし。」

そうモゴモゴ呟けば、更に呆れた顔になる玲。

「つか、そんな鈍感な鈴が王子の事話してる何て思わなかった。」
「え、‥ああ。席隣だから必然的に。」
「ふーん?」

なんて、興味なさげな返事をする玲。
でも心なしか、少し嬉しそうに見えた。