「何?出会って初日でそこまで惚れ込んじゃったんだ?」
「惚れ込んだ訳じゃないって。」
頬杖を付いていた手で前髪を弄りながら、そう言ってくる泉に反論してみせる。
ただ飽きないって言ってるだけなのに、どうして惚れ込んだとかそういう話になるんだ。
「他にも可愛い女の子は沢山居て、告白だってされた癖に、どうして千秋そっくりさんに意識向いちゃうかなぁ。」
「‥しょうがないだろ、隣の席なんだから。」
「まぁ、確かに俺でも?千秋にあんなに似てたら少しは興味持つかもしれないけど。」
「ほらやっぱり。」
「‥ああ。でもそれだけ。お前みたいにそこまで関心は持たないよ。」
何て言って、泉は鬱陶しそうに弄っていた前髪を払う。
「それは…、っ、」
言いかけた僕を遮る様に自分の唇へと人差し指を置いて、泉は呟く。
「関心を持たないのは“俺”だから。俺はそこまで千秋と交流なかったし。‥でもお前は別だもんね。」
「…‥、」
「まだ引きずる程、千秋を忘れられないんだもんね、秋は。」
そう呟いてガタ、と席を立つ。
チラリと腕時計を見れば、予鈴まであと5分だった。
僕も同じ様に缶を手に持って立ち上がる。
「忘れられないんじゃなくて、忘れさせてくれないんだよ。…思い出すとイライラしてくるよ、本当に。」
そう言いながら缶をぐしゃり、と握り潰した。
─「ふふ、秋と千秋って名前ちょっと似てる。」
「‥。」
不意に蘇った千秋の言葉。
あの頃は彼女が全てだった。
彼女の本性さえ何も知らなかったから。
潰れた缶をごみ箱へと捨てた僕を見て、泉が口を開いた。
「千秋そっくりの彼女は、やめておいた方が良いと思うけどね。」

