コーヒーの苦味が口内に広がって息を吐き出す。

泉は捲っていた本を閉じて僕と向き合った。

「いい加減お前、そろそろ俺以外とも仲良くすれば?」
「ん、…その言い方だと僕の友人は君だけみたいじゃない?」
「実際そうだろ?」
「違うよ。ただこっちの子達は全然話し掛けてくれないから、僕も何もしないだけで。」

そう言えば泉は呆れた顔をする。

「結局は俺しか居ないじゃん。」
「そう言う君は?嫌なら僕以外と食べればいいじゃないか。」

呟けば少しムッとした顔をする泉。
今の質問は痛い所を突いてしまったらしい。

「俺はただ静かに本が読めれば誰とだって…。」
「そう言うのを世間一般では“一人ぼっち”って言うんじゃなかった?」
「‥正確には、物静かって言って欲しいな。」
「はは、いいよ。じゃあ“物静か”。」

何て言いながら空の缶を指先で弄る。

「あ、じゃあさ噂のその女子と仲良くなったらどう?秋。」
「えっ?」

泉が突然そう言い出してくるから、思わず聞き返してしまった。

耳に掛けていた髪を、グシャリと片手で無造作に触りながら僕を見て、口元だけで、ふっと笑う。

「だって、初対面で秋お前、随分ご執心のようだしね?」
「…ご執心って、‥。」

呆れた様に繰り返せば、泉の切れ長の瞳が少し緩んだ。