「玲何て嫌いよ、意地悪ばっかり。」
そう呟いてふいっ、と顔を逸らす。
黙っていればカッコいい方なのに、どうしてこの幼なじみはこうも意地悪ばかりしてくるのだろう。
「あー、もう悪かったって。鈴。」
「悪かった悪かったって、毎回そう言って意地悪する癖に。」
いつも私をからかっては謝って、その度に意地悪してくるから本当に質が悪い。
「…。」
そんな風にヘソを曲げて居たら、ふいに玲は立ち上がって私の隣までやってくる。
「鈴、」
「なによ。」
「悪かったって。もう“馬鹿”何て言わねえから。」
「‥絶対?」
「絶対。」
そう言ってクシャリ、と玲の手が私の頭を撫でる。
こういう時にだけ優しくなるのは、何だかズルい。
許してあげなきゃいけなくなるじゃないか。
「許してくれる?鈴。」
「‥しょ、しょうがないから。」
「ふは、何だよそれ。」
何てそう言って頭上で笑う声がして、顔を上げれば優しく笑う玲と目が合う。
いつもいたずらっ子の様な顔で笑う癖に、そんな笑顔は本当に卑怯だと思った。
「玲ってたまにズルいよね。」
「は?」
「‥別に、こっちの話。」
そう言えば玲は不思議そうな顔をして、また私の頭を優しく撫でる。
この時、ほんの少しだけ、
私は目の前のこの幼なじみがモテる理由が分かった気がした。
「…‥へぇ、」
「ん、何かあんの、秋。」
「別に、何もないよ。」
そんな私達の光景を、王子が視界に捉えていたのに、気付きもしないで。

