そうこうしている内に鐘が鳴り響いて、現代文の授業は終わりを迎える。
「‥、っ、」
なのに私はまだ、王子様の瞳の魔力に捕まったままだ。
慌てて教科書をしまいながら、もう一度王子に向き直った。
「あ、あのっ、…、」
呼び掛ければ、反応して顔を上げる彼。
綺麗すぎるその顔に、またドキッと反応する私の心臓。
別に、彼を好きな訳じゃない。
“顔があまりにも綺麗だから、まだ慣れないのよ。”なんて言い訳。
悟られないように、そっと視線を外した。
「さっきは、どうもありがとう。」
当てられた時のお礼を、もう一度、今度ははっきりと口にして。
すると王子は頬を緩める。
「‥どういたしまして。」
そう呟いた声は、まるでベルベットの様に滑らかで驚いてしまう。
本当に王子様みたいだ、と心の中でそう思った。
すると今度はその瞳に苦悩の色を浮かべて私を見る。
私は意味が分からなくて首を捻れば、彼は申し訳無さそうに口を開いた。
「‥朝の、あの態度は失礼だったよね。…ごめん。」
「え、あ、‥全然っ。気にしないで。」
そう言えば少し安心した顔。
「君が、…僕の知ってる人に少し似ていて動揺したんだ。」
そう言う彼に、私は少し安心する。
だって分からなかったの。
初対面だったのに、どうしてあんな顔で私を見たのか。
「でも君は全然彼女とは別人なのに。‥本当にごめん。」
何て本当に反省している顔。
ハーフだからかな?
まるで何かの朗読の様に、スラスラと丁寧に喋っていて、つい聞き惚れてしまいそうだった。
「あ、私は全然大丈夫だから。気にしないで。」
そう言えば輝くような笑みを零す。
私はその綺麗な顔に見惚れてしまわないように、同じように笑い返した。

