俺は今……
 屋上で見知らぬ女子社員にものすごい形相で睨まれている。

「このあほんだら!」

 そして突然俺はきついビンタを喰らう。

 俺は、この人に何かしたのだろうか?
 まぁ、見知らぬところで嫌われることは多いけど……
 最大級の嫌いの意思の現し方なのだろうか?

「あんた、こんな所で何してんの?」

「君が、屋上に連れて来たんだと思うけど……」

 さらに怖い目で俺を睨んでいる。
 俺は、その目をそらし彼女のネームプレートに目をやる。

  【笹山】

 この人が昨日、橘さんが言っていた笹山さんか……

「このドアホ!」

 今度は、アッパーを喰らう。
 なんだ?これは、なんかの格闘ゲームか?
 アッパーカットは、俺の顎に見事に入り。
 俺の意識が遠のいていく……
 消え行く意識の中。
 菊池の笑い顔が見えた。
 他人ごとだと思いやがってこんちくしょう……

 異性には、好かれたことはない。
 仕事や学校の挨拶程度の会話がやっと。

 だからさ……
 男が女の人にぶたれるようなドラマのワンシーン。
 これも憧れのひとつだった。

 モテル男の勲章だと思っていた。

 でも、何故だろう。
 いざ殴られてみると嬉しくない。
 アッパーだからか?

 俺の思考が働いたのはここまで。
 走馬灯のように色々考えれたけれど俺の意識はここで途切れた。