会計をしようと財布を出した。
 すると橘さんがすぐにお金を出した。

「ここは、私が……」

「え?ダメですよ。
 俺が払います」

「いいんですよ。
 私が誘ったんですし……」

 うーん。
 どうしよう。
 こういう時って男が払うもんだよね。
 しかも、今回に関しては遊園地代も橘さんに出してもらっている。
 ここは、ビシッと男を決めて俺が出す!
 と思ったが時すでに遅し……
 橘さんは、会計を済ませていた。

「さぁ、歩きましょう!」

 橘さんは、そう言って俺の腕を組む。
 女の子と腕を組むなんてはじめてだ……
 俺は、ドキンドキンしながらゆっくりと歩いた。
 こういうシチュエーションにも憧れていた……
 女の子と腕を組むなんて出来ないと思っていた。
 仕事で夜遅くなった時、腕を組んで歩くカップルの姿がとても羨ましかった。
 でも、今の俺たちは他の人から見たらどうみえるのだろう?
 仲良く腕を組んで歩くカップルに見えるのだろうか?
 俺は、ゆっくりと歩く。
 腕を組んで歩くって難しいんだね。
 普通に一緒に歩くより難しい。
 歩幅をきちんと合わせて歩かないとつまづきそうになる。
 歩くとき前に進む足の置き場所に気をつけないと、今度は橘さんがつまづきそうになる。
 その度に、橘さんは苦笑いを浮かべた。