そして、もっと大きな収穫があった。
 思い出すだけでニヤけてくる。
 橘さんが、放った魔法の言葉で俺はさらに昇天する。

「デートしましませんか?」

「はい?」

 俺の声が、思わず裏返ってしまった。

「明日、お仕事お休みですよね?」

「あ、はい」

「じゃ、デートしましょう!」

 恐らく、【デート】という単語を聞くことはテレビ以外で初だ。
 モテない男はいつまでたってもモテない。
 だから、【デート】の魔法の効果は高い。

「あの……」

 おっと妄想している場合じゃなかった。
 俺は、すぐに返事をする。

「うん?」

「遊園地でもいいですか?」

「え?」

「デートの場所……
 遊園地でもいいですか?」

「はい」

 そして、爆発寸前の心臓を抑えながらデートプランを一緒に考えた。
 全てリードしてくれた。

 その後、直ぐに電話は切れお互い待ち合わせの時間まで眠ることにした。
 でも、緊張してあんまり眠れなかった。