と悩んでいると、あの人から電話がかかってきた。

 スマホには、【橘さん】と表示されている。
 あの人の名前は、橘さん。
 下の名前は知らない。
 今日の朝、『橘』って名乗っていた。
 俺は、聞き逃さなかった。
 だから、なんだってこともないんだけどね・
 俺は、すぐに出た。

「こんばんは、ちょっと誰かの声が聞きたかったので電話しちゃいました。
 あの……迷惑でしょうか?」

 このまま死んでもいいくらい幸せな気分になれた。

「迷惑じゃないです!
 俺で良ければいつでも電話してください」

 緊張してろれつがまわらない。
 嫌われたかな?
 少しの失敗で嫌われるかどうか気にする。
 それが、モテない男の性なのだ。