「なんでもありません。ハルが早とちりしただけなんです。ほんとうです!! 早くお仕事に行く支度をなさってください」
春菊は、谷嶋に心配をかけまいと、わざと明るい声を出し、元気だということをアピールするため、寝間から腰を上げた。立ち上がったその途端、春菊のほっそりとした身体が傾く。
「春菊!!」
春菊は転げ落ちそうになったものの、しかし、全身にやってくるだろう痛みは感じなかった。
なぜだろうと、不思議に思い、見上げると、そこには整った谷嶋の顔があった。
「昨日の今日だ。下手に動くのはよくない」
眉尻を下げた谷嶋が、そう言った。
(昨日の今日?)
対する春菊は、彼が口にしたその言葉の意味を理解できずにいた。
(……昨日、なにかしたっけ?)
春菊は、自分に思い当たる節がないかどうか、思考を働かせ、考える。



