(ああ、私はやっぱり匡也さんの邪魔になっている……)
もうだいぶ身体はよくなったというのに、呼吸困難になったように胸が苦しい。恐れていたことが現実になったのだと、春菊は思った。
絶望を感じ、唇を噛み締めてただただ項垂れる春菊に谷嶋の母親だと名乗る女性は止めをさしてきた。
「あの子にはいい縁談がきているんです。三日後までに出て行ってちょうだい」
女性はぴしゃりと言い放つとすぐに春菊の前から立ち去った。彼女を見送るため、侍女も後を追う。
春菊以外誰もいなくなったその場所はシン……と静まり返った。
「……っつ!」
ひとり取り残された春菊は胸を押さえ、悲しみに耐えるしかなかった。
――谷嶋を想っているのは自分ひとりだけで、やはり彼は自分を想ってくれてはいない。
ひとつ屋根の下にいながら、自分に手を出さなかったのが何よりの証拠だ。それどころか、彼は春菊を突き放すように寝室を別にしたのだから……。



