ひめごと。




 ――いや、違う。その女性はどこかしら雰囲気が谷嶋に似ている。春菊はそう思った。


「私が知らないうちに、こんな得体の知れないのをどこで拾ってきたの!! 母に相談もしないで!!」



 春菊を見るなり、大声で怒鳴る女性の目は血走っている。母と名乗るその人物は、やはり谷嶋の親族のようだ。


 どうりで雰囲気がどこかしら似ているはずだ。


「奥方様!! この方は!!」

「お黙りなさい、侍女ごときが!!」

 侍女が春菊と女性の間に入り、制止させようと試みるものの、女性は怒りっぽいようだ。侍女を見下し、進路の邪魔になっている彼女を跳ね除けた。


「いいこと? 匡也は、さる立派なお屋敷の方からお抱え医師になるよう説得されているような身の上です。貴方みたいなのを囲っているなどと知られれば、世間体が悪くなる一方ですのよ? 貴女はここから早々に出て行くべきです。そうは思いませんか?」