不思議な力を持つ女の子と暴走族の話。上




「おい。降りろ。」


ハルキの優しい声とは正反対の、威圧感のある声。

黒髪から覗く目も鋭くて、逆らえない何かの力を感じた。





私は咄嗟に言われたように車から降りる。



こうなってしまった以上、足の治療だけしてもらって何が何でも帰るしかない。

長居は無用だ。


治療なんて、本来なら私には無意味なものなんだから…。






「あっ!ちょっとアカリ!この子足怪我してんだってば。何普通に立たせてんの!」



「……あ?」



そんなハルキの声にアカリはしかめっ面。


無言で私をじっと見てきたと思ったら、そのまま何も言わず、スタスタと倉庫の方に歩いて行ってしまった。




ハルキは、まったくと、文句を呟くと私の前にしゃがみ込みこんだ。

「さ、乗って」



お、おんぶ?!

ぶんぶんと首を横に振りまくった。




「そんな怪我じゃろくに歩けないだろ。ましてや裸足なんだし…」


なんて言うハルキの横を私はそのままスタスタ歩いて通りすぎた。


こんな傷、全然痛くないもの。








「え、まじ?」



ハルキの呟きなんて私には聞こえてなくて、早くここからいなくなりたいってずっと考えていた。