「おい。降りろ。」
ハルキの優しい声とは正反対の、威圧感のある声。
黒髪から覗く目も鋭くて、逆らえない何かの力を感じた。
私は咄嗟に言われたように車から降りる。
こうなってしまった以上、足の治療だけしてもらって何が何でも帰るしかない。
長居は無用だ。
治療なんて、本来なら私には無意味なものなんだから…。
「あっ!ちょっとアカリ!この子足怪我してんだってば。何普通に立たせてんの!」
「……あ?」
そんなハルキの声にアカリはしかめっ面。
無言で私をじっと見てきたと思ったら、そのまま何も言わず、スタスタと倉庫の方に歩いて行ってしまった。
ハルキは、まったくと、文句を呟くと私の前にしゃがみ込みこんだ。
「さ、乗って」
お、おんぶ?!
ぶんぶんと首を横に振りまくった。
「そんな怪我じゃろくに歩けないだろ。ましてや裸足なんだし…」
なんて言うハルキの横を私はそのままスタスタ歩いて通りすぎた。
こんな傷、全然痛くないもの。
「え、まじ?」
ハルキの呟きなんて私には聞こえてなくて、早くここからいなくなりたいってずっと考えていた。



