俺宛てに小包が送られてきたのは、それから数ヵ月後の秋のこと。


差出人の名前がない包みを開けると、中には一本のビデオテープが入っていた。


“シザーハンズ”


彼女の部屋に置きっぱなしにしていたビデオだ。


同封の便せんには一言、
「ありがとう」
とだけ書かれていた。




……葵。


今ではもう、俺んちにはビデオデッキなんかないけれど、


あのシザーハンズだけは、

今も大切に持ってるで。






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俺はその後、高校教師になる道を選んだ。


教育者なんか俺のガラじゃないけれど、目標ができたから。



“傷ついてひとりぼっちで迷う子供たちを、少しでも減らしたい”



自分にできることなんか、たかが知れてるけど。

ひとりよがりの偽善かもしれんけど。



俺のこの手で守れるものを

この足で、見つけに行くんだ。