「うっしゃあ~! クラス替えの神は俺に微笑んだ!」


掲示板に貼りだされた新しいクラスメイトの名前を見て、ウッチーが叫ぶ。

たぶん他の男どもも、内心ガッツポーズだったはず。


「綾乃ちゃんと一緒のクラスになれるとか、俺らってマジでツイてるよな。
なあ、卓巳!」


ウッチーが騒ぐのもしかたない。

学園一かわいいと評判の女子が、俺らと同じ2年D組に決まったんやから。


ベタな言い方すれば
“我が校のマドンナ”ってやつやな。

華岡綾乃ちゃん。
名前からして、それっぽい。


「あっ。来た!」


登校してきた華岡綾乃を見つけ、ウッチーのテンションはさらに上がる。


俺はあんまりマドンナとか興味がないから、ちゃんと見たのはこのときが初めてやった。



「や~っぱり可愛いわぁ、綾乃ちゃん!」


「……おい。ウッチー」


「ん?」


「あの子は?」



丸く開いた俺の瞳は、華岡綾乃をすり抜けてその隣の女子を映す。


ウッチーは俺の視線を追って、言った。



「あぁ、たしか綾乃ちゃんの中学からの友達やわ。
水野……葵とかいう名前やったな」