今まであの男のことは、葵の口から聞かされるだけの人物で、どこか現実味がなくて。


でもこの目で本人を見てしまった瞬間、
ずっと抑えてきた怒りはコントロールをほとんど失ってしまった。



俺は……どうやら勘違いしてたみたいや。

葵のそばにいて、時には一緒に泣いたりもして、そんな時間が少しは葵の救いになるんやと思ってた。


でも違う。

そんなのは、おめでたい勘違い。


だって俺らが涙を流してる間、あの男は、笑ってるやんか。



……救いなんか、どこにもないよ。



この世界は、傷ついた人間に優しくない。

傷つけた側の人間が笑って暮らす、ふざけた世の中。




許せない。
許せない。
許せない。




あんなやつ、





消えてしまえばいいのに。