俺は有頂天の日々を過ごしてた。


大好きなカノジョがいて、しかもめでたく初エッチまですませて。


同じクラスにはサイコーに気の合う親友がいるし、そいつの恋も成就したばかり。


考えてみれば、この頃が一番幸せやったんかもな。



でも、幸せなんかそうそう続くもんじゃない。


気づかないうちにできたひび割れが、ある日ぱっくりと口を開けて……崩れ落ちる。


最初に崩れたのは――




「ウッチー……?」


9月が終りに近づいてきた頃。


いつものように登校すると、血相を変えて逆方向に歩いていくウッチーとすれ違った。


「おいっ、どこ行くねん」


俺の声を聞いてウッチーは立ち止まる。

だけど、ふり返ろうとはしない。


「どうした?」


俺はウッチーの前に回り、軽い気持ちで顔を覗きこんだ。


そう……

まさか、泣いてるなんて思わなくて。



「……何があったんや?」


思わず肩をつかんで問いかける。


ウッチーの唇が、震えながら開いた。