葵に宣言した通り、俺はその翌日、マミちゃんに別れを告げた。


マミちゃんは、泣いてた。



「そっか。……卓巳、やっぱり華岡さんのことが好きになったんやね」



最後の最後まで、別れの理由が華岡綾乃にあると誤解したままやったマミちゃん。


でも俺は本当のことを言わなかった。


それがズルさなのか、優しさなのか……自分でもよくわからへんけれど。



これまでも何人か女の子と付き合って、別れも経験してきたはずやのに、
マミちゃんとの別れは俺にとって、初めて味わう胸の痛みがあった。


俺を好きでいてくれたマミちゃん。

葵を好きになってもーた俺。


別にマミちゃんを嫌いになったわけちゃうのに、傷つけたという結果は変わらない。



俺はこのとき初めて、恋愛の理不尽さってやつを知ったんやな。


で、こうして人はちょっとずつ、大人になっていくんやろな。






葵とは、何日間か連絡を取らなかった。


別れてすぐに次いくのが、なんか自分的に許されへんかったから。



再び葵に会ったのは、夏休みが終わる直前の、8月29日。


場所は……華岡綾乃の部屋やった。