待ちに待った夏休み。


クラスの仲間10人くらいで海に行くことになった。

もちろんその中の4人は、俺ら。



『クラスの子ってことは、女の子もいるんやろ?』


前日の晩、マミちゃんの暗い声が受話器から響いてた。



『たしかに女子もいるけど……別に普通に友達やで?』


『でも中には、気になる子だっているんちゃうん?』


『え?』


『華岡綾乃さんやっけ? すごい可愛いって有名な。
あの人、卓巳のクラスやろ?』


ああ、あっちね。

ホッとため息が出る。


これこら。
俺は何に安心してるねん。



『華岡さんはウッチーが狙ってる人やもん。俺と何か起こるってことは、ありえへんって』


『絶対に?』


『うん。絶対に』



ずるいなあ、って自分でも思う。


マミちゃんの心配がマドンナの方に向いて、俺は気持ちが軽くなったんだ。