「熱は?
おっ、薬が効いたのかな、下がってきたみたいだ」
額に触れた志則の手が、ひんやりとして気持ち良い。
すぐに離れた志則の手に、もっと触れていてほしいと思った。
これ以上優しくしないで
愛はないってわかってるのに、また甘えたくなっちゃうよ……。
その思いをかき消すように、志則に声をかけた。
「志則って理学療法士になりたいの?」
「え? ……ああ、見たんだそれ。
そうだよ。俺、理学療法士になるために東京の大学に行くんだ」
真っ直ぐな瞳で答えた志則は、夢に向かって進んでるって感じがしてかっこよく思えた。
「そういえば、愛実は?」
「私も東京の大学に行くんだ」
「えっ!? 東京?
じゃあ、また一緒かよ~」
「なによその言い方~!
同じ東京でも志則には会いに行かないからね!」
「いや、愛実は絶対俺に会いに来るね!」
「絶対に行きません!!」
「ははっ、すげー自信だな。
俺ってそんなに嫌われてるの?」
「今頃気づいた?」
二人で他愛のない話をして笑った。
この他愛のない時間がとても居心地良い。
志則と初めて抱き合った時もこんな感じだった。
時間が経つのがあっという間で、外が暗くなってることにも気づかないまま話してたっけ。
懐かしいな……。

