また泣きそうになる。
涙が零れないように体を起こそうとすると、ベッドの棚の上にある本に気づいた。
なんだろう……。
何冊かの本が重ねて置いてあり、一番上の本を手に取ってみた。
≪理学療法士≫
私の知らない言葉が表紙に大きく書いてあった。
本の中を見ると、病院の写真や白衣を着た人が松葉杖の指導をしている写真などが載っていた。
理学療法士って、リハビリの先生のこと?
他の本を見ても、同じような写真が載っていた。
本と本の間に、東京の大学のパンフレットが挟まっていることに気づき、
パンフレットをパラッとめくった。
そのパンフレットの大学は、理学療法士を目指すための学校だった。
理学療法士は国家資格が必要で、
国家試験を受けるためには、
学校での勉強以外に、長期の臨床実習などが必要らしい。
青い文字でいろんなことが書いてある。
志則、理学療法士を目指してるの?
これが……志則の夢?
高校卒業後の志則のことを、何も知らない自分に気づいた。
そういえば、今まで志則の進路や将来のことを聞いたことがなかった。
志則にも私のことを聞かれたことがない。
きっと、お互い高校を卒業するまでの関係って
どこかで思ってたんだね。
私達って、寂しいね。

