志則の家に着くと、志則がすぐにベッドに寝かせてくれた。
「薬探してくるから休んでて」
そう言って部屋から出て行った志則。
いつも二人で使っていたベッドは、一人で横になると広く感じた。
志則の香りがする。
女の子を虜にしてしまう甘い香り。
志則が持って来てくれた風邪薬を飲んでもう一度横になった。
たぶんこの熱は知恵熱だから、風邪薬じゃ効かないと思う。
だけど、志則の優しさがこの薬に含まれてるって思い、何も言わずに飲んだ。
「ありがとう」
濡れた二人のコートを干してくれている志則に言った。
「俺、下に行ってるから少し寝ろ」
「ここにいて」
自然と志則に甘えている私がいた。
「襲うぞ」
「ふふふ、嘘だぁ」
自然と笑えた。
志則は襲うなんてことはしない。
今までそれに近いことは何度もあったけど。
「ほら、もう寝なさい。
寝なかったら襲うからな」
ベッドの端に座り、私の瞼に手を置いて偉そうに言う志則。
私は志則の香りに包まれながら眠った。

