「私の家に行って」


「愛実の家まで行く体力ねぇよ」


「じゃあ自分で歩いて帰る!」



このまま志則の家に行ったら、また元に戻っちゃう気がした。


慌てて志則の背中から降りようとした時、志則の声が聞こえた。




「何もしないから」




その声は真剣だった。



志則は、私が心配していることをわかってくれている。


顔を見なくても、その声だけで志則が本気で言ったことが伝わってきた。



私は、離しかけた志則の背中にもう一度身を任せた。







あったかい。



最低な志則の背中は、どうしてこんなにあったかいの……?





ずっと我慢していた涙が溢れだす。


涙がポロポロと志則の背中に染み込んでいく。




志則は私が泣いていることに気づいてないの……?




ただ黙って歩いていた。