耳が痛くなる音で、みんなが一斉に顔を上げた。


そしてその視線は、マイクを投げ捨てた志則へ。



志則は、竜也さんを鋭く睨みつけていた。



「やめろよ」


久美子が曲を止め静かになった部屋に、志則の低い声が響く。



「もしかして、彼女だった?
ごめんごめん、俺そうとは知らず」


笑って私の手を離した竜也さんに、志則は更に怒りをぶつけた。


「そうやって軽々しく女に手出してんじゃねーよ!!」



その言葉に、竜也さんが眉を歪めて立ち上がった。


「ガキが生意気な口利きやがって」



「やめろっ!!」


志則に向かって行く竜也さんを拓海先輩が止めたけど、
竜也さんの体は拓海先輩を押し避けて志則の胸ぐらを掴んだ。


そして志則の体を床に叩きつけた。




「やめてー!!」


叫んだ私の目に映ったのは、志則を殴っている竜也さんの背中。



やめて!



志則を殴らないで!! 






竜也さんの大きな背中を、必死で志則から離そうとした。


けれど志則が殴り返したことで、竜也さんは更に志則を殴りつける。