「入って」
志則の家のチャイムを鳴らすと、志則が顔を出して言った。
私が来ることをわかっていたかのように、志則は何も聞かず私を部屋に通した。
久しぶりに入った志則の部屋。
志則の甘い香りがして、公園でのことが頭に浮かんできた。
「久美子ちゃんに聞いたの?」
「うん……」
沈んだ表情で俯いている志則。
久美子を泣かせた志則に一言言ってやろうと思って来たのに、
言葉が見つからない。
どうしようもないことだったとわかってる。
だけど、それでも……
私は感情を志則にぶつけた。
「どうして……?
久美子のこと好きじゃないの?
久美子、あの後泣いてたんだよ」
俯いてた志則が、私の言葉を聞いて顔を上げた。
その顔は真剣で、少しの間の間に怒りを表した。
「俺にどうしろって言うんだよ。
好きでもないのに付き合えって?
一度だけでも抱いてやれっていうのかよ……」
「そんなこと言ってない!」
「俺にはそう聞こえた。
おまえ、久美子ちゃんが俺と付き合って幸せになれると思ってるの?
俺に抱かれればそれでいいのかよ!」
「違う……!!」
志則の言葉が胸に突き刺さった。
志則の言ってることは間違ってない。
そんなこと、私が一番わかってる。
だけど、久美子の涙を見たら志則を責めずにはいられなかった。

