森君と歌いながら、志則と久美子のことが気になってた。
二人そろってトイレ?
トイレ以外に考えられることは……
一つしかなかった。
久美子と志則は、きっと二人で話をしてる。
それが何の話なのかはわからないけど、気になってどうしようもなかった。
歌い終わっても戻らない二人。
トイレに行ってみる……?
だめ。
もし二人が一緒にいるところに私が行ったら、きっと変な空気になっちゃうよね……。
椅子に座った私に森君が声をかけた。
「愛実ちゃん、どうかしたの?
なんか心ここに在らずって感じで歌ってなかった?」
「えっ、そんなことないよ……」
「もしかして、吉田のことが好き?」
森君の質問にドキッとした。
「好きじゃないよ」
嘘か本当かわからないけど、咄嗟に出た言葉だった。
「本当に?
実はさ、前回のカラオケの時、吉田の視線が愛実ちゃんにきてたから
二人はそういう関係なんだと思ってたんだ」
「そんなふうに見えてたの……?」
「うん。倦怠期のカップルみたいだった」
「ふふっ、なにそれ~」
森君のおかげで、二人が戻ってくるまで笑っていられた。

