ずっと口を開こうか迷っていると、久美子が先に口を開いた。



「私ね、吉田君のこと本気だったんだ。
だから、今でも好き……。
二人のことを汚らわしいって思ったけど、
やっぱり吉田君のことは忘れられない。
愛実のことも、嫌いになれなかった……」


英語を訳しながら話す久美子の瞳は少し潤んでて、切ない思いが伝わってきた。



「……うん。ごめんね……久美子のこと一杯傷つけて。
私、今でも自分の気持ちがわからないの。
だけど久美子も吉田君も、私にとってとても大切な人なんだ……」


「ふふっ、そんなこと愛実を見てたらいやでも伝わってくるよ」


笑った瞬間、久美子の瞳から涙が零れ落ちた。


「私、吉田君のこと諦めないよ。
愛実と吉田君の気持ちがどこにあっても、
私の気持ちは関係ないからね」


「うん……」


「早く訳そう? 間に合わなかったら宿題出されちゃうんだから!」


「うん!」




ごめんね、久美子。

きっと私の知らないところで、久美子はいっぱい泣いたんだろうね。


いっぱい涙を流し、いっぱい考えて……


久美子は答えを見つけたんだね。





久美子と英語を半分づつ訳してノートを写し合った。


写し終わった二人のノートには、二人の涙の跡が滲んで残っていた。