朝、教室に入って久美子と小百合がいる席に行った。


私の胸は目が覚めた時からずっとドキドキしてて、二人の顔を見るとさらに激しく高鳴った。



「久美子、小百合……話がしたいんだけど」


私が話している途中で久美子は教室を出て行ってしまった。


やっぱり目も合わせてもらえない……。



胸のドキドキが、ズキズキという音に変わっていく。


話を聞いてもらえない覚悟はしてたけど、やっぱり心は傷つく。




久美子の胸の傷は、こんなもんじゃないよね。

これくらいで傷ついたなんて言えないよね。


自分を励ますように、久美子の傷の深さを自分に痛感させた。




「久美子、今はまだ話さない方がいいかも……」


小百合の言葉に顔を上げた。



「私は、なんとなくだけど愛実の気持ちがわかったよ。
恋って目に見えないから厄介だよね。
好きっていう気持ちも……。
私はたまたま自分の気持ちがはっきり見えてただけで、
きっと、恋をしててもわからない人はたくさんいると思う」



小百合の微笑みに胸が温かくなった。


こんなふうに小百合から話してくれたことが嬉しかった。


私の思いを自分のことのように言葉にしてくれた小百合。



「小百合、ありがとう……」


溢れそうになる涙を堪えて言った。



「これからは、隠し事しないでなんでも言ってね。
ちょっとは力になれるかもしれないから……」



小百合の笑顔に笑顔で答えた。




『ありがとう、小百合。』