魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「はい。食糧難のせいか近頃は山賊や盗賊が多くなりましてね。彼らを恐れて、山や森を抜ける商人も武器や防具を持つようになったんですよ」
「なるほど」

 私は店で一番丈夫そうな革のチュニックと膝下丈のズボン、手袋とブーツを選んだ。それから背負い袋に樹皮の盾を忍ばせ、後ろからの攻撃に耐えられるようにする。

「あと、水袋に包帯、ロープを少し……」

 勇飛くんが注文した品を、店主が揃えてくれた。

「これで買えそうですか?」

 勇飛くんが皮の袋を逆さにすると、カウンターに数枚の金貨が転がり出た。

「お代は結構ですよ」

 店主の言葉に私も勇飛くんも目をしばたたく。

「マスター・クマゴンからうかがっております。お二人に必要なものがあれば、すべて無料で差し上げるようにと」
「マスター・クマゴンが?」

 私と勇飛くんの声が揃った。

「はい。この村でマスター・クマゴンのお言葉に従わないものはおりません」

 私と勇飛くんは無言で顔を見合わせた。自分で“影の権力者”と言うだけはあるのかもしれない。

「ありがとうございます」
「どういたしまして。どうぞお気をつけて」