魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「怪我をしないようにもう少し丈夫なのを買った方がいいな」
「うん……。鎧っぽい方がいいかな?」
「そうだね。軽い革の鎧とか。あんまり露出度の高くないものがいい」
「そうよね。今のじゃ転んだときに膝をすりむいちゃいそうだし」

 私が笑いながら言うと、勇飛くんが真顔になった。

「そうじゃなくて」
「何?」

 目をぱちくりする私の耳に、勇飛くんが唇を寄せる。

「ほかの男にかわいいセリを見せたくない」

 とたんに私の心臓が大きく跳ねた。

 それってまさか……まさかのヤキモチ!?

 何も言えないでいると、勇飛くんが姿勢を正した。

「じゃ、準備ができたら俺の部屋まで来て」
「あ、うん」

 私の心臓はまだドキドキ言ってるのに、勇飛くんはいつも通り涼しげな表情をしていた。

 その後ろ姿を見送りながら、私は気持ちを引き締める。

 これから王城に偵察に向かうんだから、しっかりしなくちゃ。

 私は部屋に戻って何も入っていない皮の袋を腰紐に結わえ、勇飛くんの部屋に行った。ドアをノックすると、すぐに彼が出てきた。

「早いね」
「うん。持ち物ってこれだけだもの」