魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「いずれはセリとともに王城に向かうつもりだったんです。誰かがやらなければいけない。やらなければいけないのは、そしてそれができるのは、俺たちだと思っています」

 マスター・クマゴンはしばらく腕を組んで黙っていたが、やがてうなるように言った。

「危険なことはしないって……約束してくれる?」
「はい。商人のふりをして王城に潜り込み、それとなく内情を探ります」
「そう……」

 それでもマスター・クマゴンは苦虫をかみつぶしたような顔をしていたが、ぽつりと言った。

「売り物は何にするつもり?」
「え?」

 勇飛くんが小さく眉を寄せた。

「だから、商人に化けていくんでしょう? 売り物は何にするの?」
「あーっと、考えてなかったな」

 勇飛くんの言葉に、マスター・クマゴンはずっこけた。

「村の特産物って何ですか」
「と、特産物ね……普段ならコランダム産小麦にはプレミアがつくくらいなんだけど……今年は農作物全般が不作だったからね……干し肉はどうかしら」

 ああ、つまりビーフジャーキーとかね。

 私がうなずいていると、勇飛くんが申し訳なさそうに言う。