魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「ああ。昨日のような事件があったんだから、村に留まっていても安全とは思えない。どこにいてもどうせ危険なら、王城に向かうべきだと思う」

 マスター・クマゴンがミルクでパンを流し込んでから言う。

「なるほどね」
「セリはどうかな」

 勇飛くんに視線を向けられ、私はうつむいた。

 確かに、昨日の放火は私を狙ったものなのかもしれない。でも、どうして狙われるんだろう。魔法使いを嫌う人たちが私を追い出そうとしているの? でも、魔法使いに対する村の人たちの感情が侮蔑と憎悪だけではないことは、昨日の村人の話からわかったばかりなのに。

 私はおずおずと顔を上げて言った。

「私が村から出ていった方がいいってこと?」
「そうじゃないよ。実は俺、今回の犯行は外部の者の仕業なんじゃないかと思ってるんだ」
「え?」

 私は勇飛くんを見た。マスター・クマゴンも彼を見ている。

「今までいろいろな人から集めた情報によると、レッドバレル王国にはもう魔法使いはセリ一人、剣士は俺と生死のはっきりしないアーマントゥルードしかいないだろ。ほかの魔法使いや剣士はこれまでに処刑されたり行方不明になったりしている」