魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

 それでも、私は答えがほしくて彼を見た。夕焼けで逆光になっていて彼の顔がはっきり見えないせいか、普段の私なら言えそうにないことを言っている。恥ずかしくて耳まで熱くなってるけど、きっと夕焼けに染まってるんだと思われるはず。

 勇飛くんが小さく笑って、石塀の上に置いている私の手に自分の手を重ねた。びっくりして、ドキドキして、頭の中に鼓動がガンガン響いている。

「誰でもいいってワケじゃないよ」

 ささやくような声で言って、勇飛くんが私の手をギュッと握った。大きくて温かくて力強い手。

「もっと……ちゃんと……言ってほしい」

 私ってば大胆なことを言ってる。それとも自意識過剰すぎ?

 そっと見上げると、彼がふっと笑ったのがわかった。

「言わないとわからない?」

 教室では聞いたことのない、意地悪な響きのする声。

「わからない」

 ちょっとすねたように言うと、彼が私の耳元でささやいた。

「セリだからだよ。セリが一緒にいてくれるからだ」

 そのまま彼の唇が頬に触れた。嘘みたい。彼が魔法にかけられたからじゃなくて、自分の意思で私の頬にキスしてくれてる。