魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「俺にはわからない。魔法使い以外読めない文字なのかもね」
「魔法使い以外……」

 つまり、悪魔と闇の契約を結んでいない人、コウモリの生き血を飲んでいない人は、魔法書の文字が読めないんだ……。

「不思議」
「そうだね」

 勇飛くんが言って、手足をうんと伸ばしながら、草の上にごろんと寝転がった。枯れ草の匂いとともにかすかに汗の匂いがする。

「勇飛くんは剣の修業でもしてた?」
「うん、剣士は滝のそばで修業するものだと聞いたから」
「あ、マスター・クマゴンも同じこと言ってた」
「ああ、熊田先生ね」

 勇飛くんがクスッと笑った。

「あの巨体でオネエ言葉なんだもん、笑っちゃう」

 私も笑ったとき、勇飛くんが起き上がって私を見た。

「なあ」
「なあに?」
「何もなかったの?」
「え?」

 私は瞬きをする。

「その、クマゴンと一晩一緒にいて……何もされなかった?」

 勇飛くん、もしかして心配してくれてたの?

 そう思うとなんだか胸がくすぐったい。私は照れ隠しに髪を耳にかけながら言う。