魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「そうじゃのう。どのような魔法が望みじゃ?」
「そうねぇ……とりあえず攻撃魔法と治癒魔法の簡単なのを」
「それなら初歩魔法の本がいいかの」

 声が聞こえてきた直後、書棚の中程にある本が一冊、ひとりでにすっと出てきた。それが宙をふわふわ漂い、私の差し出した手のひらの上にコトンと落ちる。

「はぁ、すごい」
「何を言っておる。わしはただの図書館。ちいとも動けやせぬ。わしを創り出したあんたたち魔法使いの方がよっぽどすごいわ」
「私以外の魔法使いはきっとすごかったんだろうね」

 私は言いながら本を開いた。パラパラとめくりながら簡単そうなのを探す。

「攻撃魔法、敵など対象物に火をつけ燃やす呪文は、インフレイム……」

 つぶやいたとき、また図書館の悲鳴のような声が聞こえてきた。

「やめろ、わしに火をつける気か」
「え?」

 顔を上げると、今度はホッとしたような声。

「ああ、読んでおるだけか。魔法の杖を持っておらんのだから、魔法が発動する心配はなかったな」
「魔法の杖? 魔法をかけるのに杖がいるの?」

 私の問いかけに、呆れたような声が降ってくる。