魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「いずれにしろ、王城に忍び込めば状況がわかるだろう。そのうえで、次の行動を考える方がよさそうだ。そうしなければ、無駄に魔法使いや剣士が命を落とすことになりかねない」

 勇飛くんの言葉を聞いて、今度は広場が静まりかえった。

 さすが学級委員、言葉に説得力がある!

 なんて思って、ふと気づいた。勇飛くんはセリの体調が戻り次第って言ったよね? ってことは私も行かなくちゃいけないってこと!?

 やだよぅ、魔法も使えない力もない私がついて行ったって、足手まといになるだけだし。

 帰りたい。こんな世界にいたくない。どうすればゲームの世界から出られるの? こら私、早く起きなさい!

 頬を片手でペシペシ叩いていると、マスター・クマゴンに「やめなさい」と手首をつかまれた。

「この子、まだコンフュージョンが抜けないみたいで」

 マスター・クマゴンが曖昧な笑いを浮かべながら、私を広場から連れ出した。

「その子を葬ってあげましょう」

 マスター・クマゴンに言われて、私はまだ右手にコウモリを乗せたままだったことに気づいた。思わず振り落としそうになって、かろうじてこらえる。この子はもう一人の魔法使い、アイネアスの最期の言葉を伝えて息絶えたのだ。