魔恋奇譚～憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「ってことは、クマゴンに似てるけど、ゲームの中のキャラってことか」
「そうみたい」
「知っている人が増えたと思ったんだけど、ぬか喜びだね」

　勇飛くんが残念そうに小さく首を振った。そんな彼に、マスター・クマゴンが近寄る。

「剣士様、王城の様子を調べるとはどうなさるおつもりで？」

　担任の熊田先生と同じ顔で敬語を使われ、勇飛くんは一瞬戸惑ったような表情をしたが、すぐに小さく咳払いをして言った。

「セリの体調が戻り次第、再び王城に向かおうと思います。ただし、今度は請願書を届けることではなく、内情を探ることが目的です」
「どういうことですか？」

　村人の一人が声を上げた。勇飛くんはそちらを見ながら言う。

「もしかしたら、王の身に何かが起こっているのかもしれない。重い病気にかかっていて正常な判断ができず、俺たちに重税を課したのかもしれない。あるいは誰かが王になりすまし、王国を我が物に治めようとして力のある剣士たちや魔法使いを葬り、民から富を搾り取っているのかもしれない」

　勇飛くんが言葉を切り、広場にざわめきが広がった。