魔恋奇譚～憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

　マスター・クマゴンに怒鳴られて私は首をすくめる。

　コウモリの生き血を飲んだって何度も思い出させないでよっ。

　心の中で言い返してから、私はさっき聞いた女性の声が話したことを伝えた。いつの間にか回りに集まっていた村人たちがため息をつく。

「これで頼みの剣士様はユウヒ様だけになってしまわれた……」
「まだわからんぞ。アイネアスは剣士様を逃したと言っていたそうじゃないか。アーマントゥルード様もご無事かもしれん」
「だがいつ戻られるか……」

　重い空気が広場に立ちこめたとき、力強い足音が近づいてきた。村人たちが顔を上げ、ハッと振り返ると道を空けた。そこを通って勇飛くんが歩いてくる。

「どうやら王城の様子を調べるべきかもしれないな」

　勇飛くんが私を見て言ったが、視線を私の後ろに向けて、驚いたように目を見開いた。

「クマゴン……？」
「マスター・クマゴン……って呼ばないといけないみたい」

　私は勇飛くんに近づいて小声で言った。

「俺たちだってわかってくれた？」

　勇飛くんのささやき声に、私は首を振る。