「触らないと言葉がわからないでしょうが! つべこべ言わずに早くなさい!」
背中を押されて、私は樫の木によろよろと近づいた。そのとき枝にぶら下がっていたコウモリが力なく落ちてきた。
「えっ!」
とっさに両手を伸ばして、それを受け止めてしまった。
「ぎゃー! やだーっ、コウモリに触っちゃったよぉ!」
悲鳴を上げた直後、頭の中に女性の声が響く。
「西の森を抜ける途中で盗賊に襲われました。彼らの狙いは金品ではなく、私たちの命のようです。王城には行かせない、と言われました。どうやら私たちに王城に行かれては困る輩がいるようです。私はここで死ぬことになります。剣士様のお命だけはお救いしました。どうか無事に村に帰り着かれますように。アイネアス」
声が途切れた直後、コウモリの羽が一度小さく震えて動くのをやめた。
「使いコウモリは何て言ったの?」
マスター・クマゴンに袖をつかまれ、私は振り返った。
「さっきの声、聞こえてなかったんですか?」
「あのね、使いコウモリが運ぶ言葉は、コウモリの生き血を飲んだ魔法使いにしか聞こえないって何度も言ってるでしょうがっ!」
背中を押されて、私は樫の木によろよろと近づいた。そのとき枝にぶら下がっていたコウモリが力なく落ちてきた。
「えっ!」
とっさに両手を伸ばして、それを受け止めてしまった。
「ぎゃー! やだーっ、コウモリに触っちゃったよぉ!」
悲鳴を上げた直後、頭の中に女性の声が響く。
「西の森を抜ける途中で盗賊に襲われました。彼らの狙いは金品ではなく、私たちの命のようです。王城には行かせない、と言われました。どうやら私たちに王城に行かれては困る輩がいるようです。私はここで死ぬことになります。剣士様のお命だけはお救いしました。どうか無事に村に帰り着かれますように。アイネアス」
声が途切れた直後、コウモリの羽が一度小さく震えて動くのをやめた。
「使いコウモリは何て言ったの?」
マスター・クマゴンに袖をつかまれ、私は振り返った。
「さっきの声、聞こえてなかったんですか?」
「あのね、使いコウモリが運ぶ言葉は、コウモリの生き血を飲んだ魔法使いにしか聞こえないって何度も言ってるでしょうがっ!」


