魔恋奇譚～憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「使いコウモリ？　何ですか、それ」

　ぼんやりと言う私の手をつかんで、マスター・クマゴンが私を立たせた。

「あんたも来るのよ！」
「ど、どうしてですか？」
「使いコウモリの言葉がわかるのは魔法使いだけなんだから」
「ど、どうしてですかっ」
「わかんないの？　コウモリの生き血を飲んだでしょうがっ」

　そのことは思い出させないでっ！

　私はマスター・クマゴンに引きずられるようにしながら、ドアを叩いた村人の案内で、村の中央辺りにある広場に連れてこられた。その一本の樫の木の枝に、コウモリがぶら下がっている。

「あれね？」

　マスター・クマゴンが指さし、村人がうなずく。

「さ、あんた、あのコウモリに触れなさい」
「ふ、触れる？」

　私は目を見開く。冗談でしょ、いくら先生に言われたからってそれだけは嫌だから！

「何してんの、早くしなさい。あの使いコウモリはもう一人の魔法使いが送ったコウモリのはずだから！」
「だからってどうしてコウモリに触らなくちゃいけないの～！」

　泣きそうな声で言う私に、マスター・クマゴンが怒鳴る。