魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

 それはネフライトの思い上がりだろうか? いいえ、そうではないのはわかる。あの強力な魔法使いのディヴィナが師として慕っている相手なのだから。

 使いコウモリでこちらの動きが監視されている以上、勇飛くんに連絡を取ることはできない。今できるのは時間を稼ぐこと……。

 私はゆっくりと城門に向かって歩き出した。だが、すぐにネフライトの声が頭の中に聞こえてくる。

「いいのか、そんなにのろのろ歩いて。王が喉に突きつけている剣が、ますます深く刺さっていくぞ」

 それと同時に、誰かのうめき声が聞こえてくる。目をつぶると、王様が手を震わせながら剣を自分の喉に押し当て、苦痛の声を上げている姿が見えた。

「ひどい!」
「おまえがさっさと歩かないからだ」

 ネフライトの言葉に、私は頭の先まで血が逆流するような、今まで感じたことのない激しい怒りを覚えた。

 絶対に許せない!

 私は気持ちのままに駆けだした。ほどなくして閉ざされた城門の前に着く。

「来たわよ、開けなさいよっ!」

 怒鳴ると、ギギーと音を立てながら城門が開いた。月明かりに照らされ、城壁の中の広い庭が見える。手入れをする人がいないようで、煉瓦の花壇は崩れ、石畳の道には草が生えていた。