魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「セリは魔力を温存して!」

 勇飛くんに言われたけど、私は首を振る。

「ううん、私も戦う。あなたの力になりたいもの」

 勇飛くんは私を見て、ニッと笑った。こんなときになんだけど、身悶えしそうなほど男っぽくてかっこいい!

「何がいいかな。麻痺呪文でも試してみよう」

 私は腰紐の杖を抜いて、「パラリシス」と呪文を唱え、目前に迫っていた盗賊に杖の先を向けてスペルを綴った。直後、男の足取りがおぼつかなくなり、その場にくずおれる。

「なは……なははっ……」

 口も痺れてうまく動かせないようで、意味不明な言葉をつぶやき、口からよだれを垂らしながら、あらぬ方向を見ている。

「きさま、何をしたっ」

 頭が私に突進してきた。その前に勇飛くんがすっと割って入る。

「おっと、おまえの相手は俺だ!」
「けっ、若造が!」

 頭が振り下ろした大刀を勇飛くんが剣でしっかりと受け止めた。一瞬ののち、互いに剣を弾いて飛び退く。無言で睨み合った直後、また剣がぶつかった。二人が剣を交えている隙をついて勇飛くんに斬りつけようと、残る一人が狙っている。

「コンフュージョン!」