「慈悲の人と呼ばれたビクスバイト王が、いったいどうしてしまわれたのだろう」

 みんな国王がネフライトに操られていることは知らないみたいだ。

 やがて小さな村が見えてきて、私たちは公共の井戸から水を汲んで皮袋に補給した。それからすぐに歩き始める。村を抜けた後、道は森の中へと続いていく。双頭の獅子に襲われ、偽アーマントゥルードと出会った森だが、ここを通り抜けなければ、次のカルサイト村にはたどりつけない。

 私たちは警戒しながらも急ぎ足で歩いた。

 徐々に森が深くなり、日の光が差し込まなくなってきた。前回はこの辺りで獅子に襲われたんだ、と思ったとき、どこからか人の悲鳴が聞こえてきた。

「た、助けてぇっ」

 私たちは声のする方へと走り出した。少し先の木々が開けたところに、三人組の盗賊に囲まれて、夫婦とおぼしき旅人がガタガタ震えている。

「むむっ、剣士と魔法使いだ」

 私たちを見つけて、盗賊の一人が言った。

「まだガキだ。それに数は俺たちの方が多い。ひるむな、かかれぇ!」

 頭(かしら)とおぼしき男の合図で、盗賊たちは旅人の横をすり抜け、私たちに襲いかかってくる。