私は自分の食器を洗い場に運んで手早く洗うと、一直線に自分の部屋を目指した。ドアを開けたところで、勇飛くんの声に呼び止められた。

「セリ」

 振り向くと、ダイニングから勇飛くんが急ぎ足で歩いてくる。

「大丈夫?」

 心配顔をされて、私はにこっと笑ってみせる。

「うん。おいしい食事も食べたし、元気もりもり!」

 ガラにもなく力こぶを作ってポーズを取ると、勇飛くんが小さく笑った。

「大丈夫じゃないなら、そう言ってくれたらいいのに」

 背中に勇飛くんの手が回され、ふわりと抱き寄せられた。びっくりする私に、彼が低い声で言う。

「俺、そんなに頼りないかな?」

 顔を上げて勇飛くんを見ようとしたけど、彼の頬が肩に乗せられていて、表情は見えなかった。

「頼りないなんて、思ったことないよ」
「じゃあ、俺の前では大丈夫なふりなんかしないで、不安なときや心細いときは頼ってほしいな」
「ユウヒくん……」

 私は彼の背中にそっと手を回した。

「心配かけてごめんね。ちょっとお母さんのことを思い出しただけなの。でも、大丈夫なのは本当」
「無理してない?」