「この人は良い魔法使いだよね。だって、草むしりをして誰かの役に立とうとしてる」
「そうだね」

 勇飛くんが男の子の頭を撫でた。憧れの剣士様に“いい子いい子”されたのが嬉しいのか、男の子の顔が輝いた。

 この子のように、身分や職業で他人を判断しない子どもが増えますように。

 心の中で祈りながら、私は草を引き抜き続けた。


 その日の夜も、マスター・クマゴンと勇飛くんと三人でテーブルを囲んだ。きっとこれは、いわゆる最後の晩餐になるだろう。

 そんなことを思うと、緊張して食事も満足に喉を通らない。

「しっかり食べないとダメよ」

 マスター・クマゴンに言われる。外見は別として、口調はお母さんみたいだ。

 お母さん、どうしてるかな。

 お母さんのことを思い出すと、目に涙がにじんできた。

「セリ?」

 勇飛くんが心配そうに声をかけてくれる。

「ううん、大丈夫、ごめんね」

 私は人差し指で涙を拭うと、おもむろにフォークとナイフを構えた。

「村の人たちがくれた貴重な食糧だもんね。きちんと残さずいただきます!」

 そうしてマスター・クマゴンも呆れる速さで食事を平らげた。

「ごちそうさま。悪いけど先に部屋で休むね」