魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「がんばろうね」

 二人で握手をして、私たちは別れた。

 私は広場に向かう勇飛くんを見送ると、ソードマン・ハウスに戻った。マスター・クマゴンからバケツと雑巾、それにハタキとホウキを借りて魔法図書館に向かう。図書館が近づくと、今度はひとりでにドアが開いた。

「忘れ物か?」

 太く低い声が聞こえてきた。

「うん、そうかな。あなたにお礼をするのを忘れてたの」
「礼じゃと?」

 怪訝そうな声が降ってくる。

「うん。掃除してもいい?」

 返事がない。嫌なのだろうか、と思ったとき、かすれた声が聞こえた。

「掃除なんぞ、久方ぶりじゃな」
「そっか。魔法使いも減っちゃったもんね。じゃ、まずは本棚のほこりを落とすわよ」

 私は螺旋階段を上ると、手すりにつかまりながら手を伸ばして、本棚のほこりをハタキで落とし始めた。

「く……」

 変な声が聞こえてきた、と思った瞬間、図書館の中に笑い声が響き渡った。

「ひゃ……ひゃはははっ……あははっ」

 くすぐったそうな声だ。

「も、もう耐えられんっ、早う終わらせとくれ」
「少し我慢して。まだ半分くらいしかできてない」